ドイツで妊娠が分かったけれど、まず何をすればいいの?どこで健診を受けて、どこで出産するの?と戸惑う方は多いと思います。
特に日本と違うのが、妊婦健診・出産・産後ケアを、それぞれ別の専門職や施設が担当することです。
この記事では、ドイツで妊娠が分かってから出産・産後までにやることを、日本との違いを中心に順番に説明します。

最初は知らない仕組みばかりですが、流れが分かればそれほど難しくありません。特に助産師探しだけは早めに始めるのがおすすめです。
先に結論:妊娠が分かったら、この順番で進めればOK
① 婦人科を予約する
② 助産師を探し始める
③ 妊娠記録冊子を受け取り、妊婦健診を受ける
④ 妊娠中期から出産する場所を探す
⑤ 出産準備クラスを予約する
⑥ 出産する病院へ事前登録する
⑦ 仕事をしている場合は母性保護制度・出産手当を確認する
⑧ 入院バッグと赤ちゃん用品を準備する
ドイツの妊娠・出産、日本と何が違う?
最初に日本との大きな違いを理解しておくと、その後の流れがかなり分かりやすくなります。
妊婦健診をする場所と、出産する病院が違うことが多い
ドイツでは、まずFrauenarzt / Frauenärztin(婦人科医)の診療所で妊婦健診を受けるのが一般的です。
そして出産時には、自分で選んだ病院の産科へ行きます。
つまり、日本でよくある「妊婦健診で通っている産院に、そのまま入院して出産する」という形とは少し違います。
妊娠を診てもらう場所と、赤ちゃんを産む場所を別々に考えると理解しやすいです。
助産師が妊娠中から産後まで深く関わる
ドイツで特に重要なのが、Hebamme(助産師)の存在です。
日本語では「助産師」ですが、ドイツでは出産の瞬間だけではなく、
- 妊娠中の相談
- 妊婦健診の多く
- 出産準備
- 正常分娩の介助
- 授乳の相談
- 産後の母体のチェック
- 赤ちゃんの体重や発育の確認
- 自宅での育児相談
まで広く担当します。
超音波検査など一部を除けば、正常な妊娠では助産師が妊婦健診を担当することもできます。
正常分娩では助産師が中心になって出産を支え、必要になった場合に医師が加わるという考え方も、ドイツの大きな特徴です。
参考:ドイツの公的情報「妊娠・出産・産後における助産師の役割」
「自然な出産を大切にする」と「痛みを我慢する」は別の話
ドイツでは、正常に進んでいる出産では、できるだけ自由に動く、姿勢を変える、浴槽を使うなど、出産を自然な身体のプロセスとして支える考え方が比較的強くあります。
ただし、これは「麻酔を使わず痛みに耐えるべき」という意味ではありません。
病院では硬膜外麻酔などの鎮痛方法も普通に利用されていますし、帝王切開も珍しくありません。
日本の「自然分娩か無痛分娩か」という二択よりも、出産の進み方に合わせて必要な支援や医療を選ぶイメージに近いと思います。
ドイツで妊娠が分かったら、最初にやること
1.まず婦人科を予約する
妊娠検査薬で陽性が出たら、まず婦人科へ連絡します。
そこで妊娠の確認、出産予定時期の確認、血液検査などが行われ、その後の妊婦健診が始まります。
人気の診療所では新規患者を受け付けていないこともあるので、普段通っている婦人科がない場合は早めに探しておくと安心です。
2.助産師探しはできるだけ早く始める
婦人科の予約と同時くらいに始めたいのが、助産師探しです。
地域によってはかなり早い段階から予約が埋まります。
特に重要なのは、出産後に自宅へ来てくれる助産師です。

私なら、妊娠が分かったら婦人科の予約とほぼ同時に助産師も探します。「まだ早いかな?」くらいで始める方が安心です。
公的医療保険に対応している助産師は、GKV-Spitzenverbandの公式検索から探すこともできます。
3.妊娠記録冊子を受け取る
妊娠が確認されると、Mutterpass(妊娠記録冊子)が発行されます。
ここには、血液型、検査結果、胎児の発育、超音波検査、妊娠中のリスクなどが記録されます。
婦人科だけでなく、別の医療機関や出産する病院でも重要になるので、妊娠中は持ち歩くのがおすすめです。
ドイツの妊婦健診は日本とどう違う?
正常に経過している妊娠では、基本的に妊娠32週頃までは約4週間ごと、その後は約2週間ごとに健診が行われます。
血圧、尿、胎児の発育などを確認していきます。
超音波検査は標準では3回
日本から来ると驚きやすいのが、超音波検査の回数です。
公的医療保険で正常妊娠の場合、標準的な超音波検査は基本的に次の3回です。
| 時期 | 標準検査 |
|---|---|
| 妊娠9〜12週 | 1回目 |
| 妊娠19〜22週 | 2回目 |
| 妊娠29〜32週 | 3回目 |
医学的な理由があれば追加検査も保険対象になります。
一方、「毎回赤ちゃんを見たい」という希望だけで追加する場合は自己負担になることがあります。
参考:公的情報「妊娠中の超音波検査」 / G-BAの妊婦健診ガイドライン
婦人科と助産師を組み合わせて健診を受けることもできる
すべての健診を婦人科で受ける必要はありません。
正常な妊娠であれば、超音波検査など医師しかできない検査は婦人科で受け、それ以外の健診を助産師にお願いする方法もあります。
「医師か助産師か」の二択ではなく、両方を組み合わせられる点もドイツらしいところです。
ドイツではどこで出産する?病院以外の選択肢もある
ドイツでは、出産する場所を自分で選べます。
大多数は病院で出産しますが、病院以外の選択肢も制度としてきちんと存在します。
病院で出産する
もっとも一般的なのが病院です。
- 助産師と医師がいる
- 硬膜外麻酔などを利用できる
- 帝王切開などが必要になっても対応しやすい
- リスクのある妊娠にも対応できる
- 出産後そのまま入院できる
「医療的な安心感を重視したい」「無痛分娩を希望している」という場合は、病院が基本的な選択肢になります。
バースセンターで出産する
Geburtshaus(バースセンター)は、病院より家庭的な環境で、助産師を中心に出産する施設です。
正常に経過している低リスクの妊娠が対象です。
助産師による継続的なサポートを受けやすい一方、硬膜外麻酔や帝王切開はできません。医療介入が必要になれば病院へ移ります。
自宅で出産する
Hausgeburt(自宅出産)も、リスクの低い妊娠では選択肢になります。
助産師が自宅に来て出産を支えます。
ただし病院で行う麻酔や手術は利用できないため、必要になった場合は病院へ移ります。

私は病院名だけを見るより、無痛分娩への対応、麻酔科医の体制、個室・家族部屋、英語対応などを確認して比べます。説明会や見学があれば参加すると雰囲気もかなり分かります。
ドイツの自然分娩・無痛分娩はどう考えられている?
日本人が特に気になるのが、出産時の痛みへの考え方だと思います。
無痛分娩を希望するなら硬膜外麻酔を確認
ドイツではPDA / Periduralanästhesie(硬膜外麻酔)が、病院で使われる代表的な鎮痛方法です。
公的情報では、経腟分娩のおよそ5人に1人で利用されています。
日本でいう「無痛分娩」が特別な出産方法として完全に分離されているというより、病院で利用できる鎮痛手段の一つとして扱われているイメージに近いです。
ただし、病院によって麻酔科医の体制や対応条件が違います。
無痛分娩を希望している場合は、病院選びの段階で確認しておくと安心です。

無痛を希望しているなら、遠慮せず最初から伝えて大丈夫です。病院見学のときに「いつ頼めるのか」「夜間も対応できるのか」を確認しておくと安心ですよ。
自然な出産を重視していても、医療介入は珍しくない
ドイツでは助産師主体の出産や、自由な姿勢、水中出産などが比較的身近なので、「とにかく自然分娩を重視する国」という印象を持つかもしれません。
しかし、実際には医療介入も珍しくありません。
2024年には、ドイツの病院での出産の33.0%が帝王切開でした。
つまり、助産師を中心に正常な出産を支える文化と、必要なときには医療介入を行うことは両立しています。
「自然分娩でなければいけない」「無痛にしなければいけない」と決めつけるのではなく、自分が希望することを医療スタッフに伝え、状況に応じて選択することが大切です。
出産する病院はどう選ぶ?確認したいポイント
妊娠中期頃から、近くの病院を調べ始めましょう。
無痛分娩・緊急時の医療体制を確認する
- 硬膜外麻酔は利用できる?
- 麻酔科医は24時間対応できる?
- 帝王切開が必要な場合の体制は?
- 新生児集中治療室や新生児科はある?
- ハイリスク妊娠に対応している?
出産中・出産後の過ごし方も確認する
- パートナーは立ち会える?
- 家族部屋や個室はある?
- 水中出産などの選択肢はある?
- 出産後、早めに帰宅することもできる?
- 英語で対応してもらえる?
病院によってかなり雰囲気が違います。
Infoabend(説明会)や分娩部門の見学を行っている病院も多いので、可能なら実際に見て決めるのがおすすめです。
出産前に準備しておく4つのこと
1.出産準備クラスを予約する
Geburtsvorbereitungskurs(出産準備クラス)では、出産の流れ、呼吸法、陣痛への対応、鎮痛方法、授乳、産後の生活などを学びます。
助産師が開催していることが多く、公的医療保険では妊婦本人の標準的なコース費用がカバーされます。
パートナー分の費用は健康保険によって扱いが異なるので、加入している保険へ確認してください。
人気のコースは早く埋まるので、妊娠後期まで待たずに調べておくのがおすすめです。
2.病院への出産登録をする
病院で出産する場合、多くの病院ではGeburtsanmeldung(出産登録)を行います。
妊娠経過や既往歴、希望する出産方法、鎮痛方法などについて相談し、病院側に自分の情報を登録しておきます。
日本語の「産院を予約する」というより、出産前に病院側と情報共有しておく感覚に近いです。
登録時期は病院によって違うので、出産予定の病院のウェブサイトを確認しましょう。
3.母性保護制度と出産手当を確認する
ドイツで雇用されている場合は、Mutterschutz(母性保護制度)も重要です。
通常の保護期間は、
- 出産予定日の6週間前から
- 出産後8週間まで
です。
また、条件を満たす場合はMutterschaftsgeld(出産手当)を受け取れます。
雇用形態や健康保険によって扱いが変わるので、早めに勤務先と健康保険へ確認しましょう。
公式情報:ドイツ連邦政府「母性保護制度」 / 出産前後に受けられる給付
4.入院バッグとベビー用品を準備する
予定日が近づく前に、入院バッグも準備します。
入院バッグの基本チェック
☐ 妊娠記録冊子
☐ 身分証明書
☐ 健康保険カード
☐ 病院から指定された書類
☐ 着替え・下着
☐ 洗面用品
☐ スマホ・充電器
☐ 赤ちゃんの退院時の服
☐ 車で帰るならチャイルドシート
必要なものは病院によって違うので、出産予定の病院が公開しているリストも確認してください。
赤ちゃん用品は、日本で定番のものとドイツでよく使われるものが意外と違います。こちらの記事でドイツで買いやすいものをまとめています。
出産後はどうなる?ドイツならではの産後ケア
病院から早めに帰宅する選択肢もある
病院で出産後そのまま数日入院することもできますが、母子ともに問題がなければ、出産後比較的早く自宅へ帰る方法もあります。
日本のように「出産したら数日間入院する」が必ずしも唯一の形ではありません。
早めに退院する場合は、出産後の母子を見てくれる助産師を確保しておくことが特に重要になります。
産後は助産師が自宅まで来てくれる
ドイツでは、Wochenbett(産後の回復期)を大切にする考え方があります。
一般に出産後6〜8週間ほどを指し、この時期は母体の回復と赤ちゃんとの生活に慣れることを優先します。
そして大きな特徴が、助産師による家庭訪問です。
- 赤ちゃんの体重や発育
- へその状態
- 授乳やミルク
- 母体の回復
- 傷の治り
- 赤ちゃんのお世話
などを自宅で相談できます。
「退院したら、あとは夫婦だけで頑張る」のではなく、退院後も専門職が家庭に入って支えてくれるのが、日本との大きな違いです。

この産後の家庭訪問は、ドイツで出産するメリットの一つだと思います。初めての育児だと「これで大丈夫?」が毎日出てくるので、自宅で直接聞けるのはかなり心強いです。
ドイツで妊娠・出産するときのよくある質問
妊娠したら、まず出産する病院へ行けばいい?
通常はまず街の婦人科を予約します。出産する病院は妊娠中期以降に別途選ぶことが多いです。
助産師は絶対に必要?
利用する範囲は自分で選べます。ただし、特に産後の家庭訪問は非常に実用的なので、利用したい場合は妊娠初期から探すのがおすすめです。
ドイツでも無痛分娩できる?
できます。病院では硬膜外麻酔が一般的な鎮痛方法の一つです。ただし、バースセンターや自宅出産では利用できません。
妊婦健診のたびにエコーをしてもらえる?
正常な妊娠の場合、公的医療保険の標準的な超音波検査は3回です。医学的に必要な場合は追加検査が行われます。
日本語が通じる病院を探した方がいい?
日本語対応の施設はかなり限られます。英語対応の可否を確認する方が現実的です。
出産中は長い文章を説明する余裕がないこともあるので、無痛分娩の希望、アレルギー、既往歴など重要なことは、簡単な英語やドイツ語でメモにしておくと安心です。
英語でもドイツの妊娠・出産について調べたい場合は?
外国人向けには、IamExpatやExpaticaにもドイツでの妊娠・出産をまとめた英語ガイドがあります。
ただし、制度や給付は変更されることがあるので、最終確認はドイツ政府や健康保険などの公式情報を使うのがおすすめです。
ドイツで妊娠してから出産までのチェックリスト
| 時期 | やること |
|---|---|
| 妊娠判明 | ☐ 婦人科を予約 ☐ 助産師探しを開始 |
| 妊娠初期 | ☐ 妊娠記録冊子を受け取る ☐ 妊婦健診を開始 ☐ 健康保険の補償を確認 |
| 妊娠中期 | ☐ 出産する場所を検討 ☐ 病院の説明会・見学を確認 ☐ 出産準備クラスを予約 |
| 妊娠後期 | ☐ 病院へ出産登録 ☐ 無痛分娩などの希望を確認 ☐ 母性保護制度・出産手当を確認 ☐ 入院バッグを準備 |
| 出産後 | ☐ 助産師の家庭訪問 ☐ 母体の回復を優先 ☐ 出生後の行政手続きを開始 |
まとめ|ドイツの妊娠・出産は「婦人科+助産師+出産施設」で考える
ドイツで初めて妊娠すると、日本とは違う仕組みに最初は戸惑います。
でも、大きく分ければ、
- 妊娠中の診察 → 婦人科と助産師
- 出産 → 自分で選んだ病院など
- 正常な出産のサポート → 助産師が中心
- 医療介入が必要な場合 → 医師・病院
- 産後 → 助産師による家庭訪問
と考えるとシンプルです。
そして、妊娠が分かった段階で助産師探しだけは早めに始める。これはぜひ覚えておいてください。
出産方法についても、「ドイツではこうするもの」と無理に合わせる必要はありません。病院・助産師と相談しながら、安心できる方法を選んでいけば大丈夫です。

最初から全部決めなくても大丈夫です。まず婦人科と助産師を確保して、妊娠が進むにつれて病院や出産方法を考えていけばOKですよ。
出産準備を進める方はこちらもどうぞ
この記事で参照した主な情報
- G-BA:ドイツの妊婦健診ガイドライン
- familienplanung.de:助産師による妊娠・出産・産後ケア
- familienplanung.de:妊娠中の超音波検査
- familienplanung.de:出産場所の選び方
- familienplanung.de:出産時の硬膜外麻酔
- ドイツ連邦政府:母性保護制度
- ドイツ連邦政府:出産前後に受けられる給付
- ドイツ連邦政府:産後の助産師による支援
- GKV-Spitzenverband:助産師検索
- IamExpat:Pregnancy in Germany
- Expatica:Having a baby in Germany
※この記事は、ドイツの一般的な妊娠・出産制度を分かりやすく紹介するものです。妊娠経過、検査、出産方法、麻酔、投薬など個別の医療判断については、担当の婦人科医、助産師、出産予定施設に確認してください。健康保険の補償範囲は加入先や契約内容によって異なる場合があります。


